『ソーシャルワーク研究』誌(相川書房刊)
「人と環境とその相互接触面の諸相に関する研究」倫理指針
 =フルバージョン=

目 的

 この指針は,利用者・当事者及び組織(以下,「研究の対象」とする)の利益に離反しないソーシャルワーク研究の発展に期する際の基本的原則を示した.すなわち,ソーシャルワーク研究は,この研究に携わる者が,「研究の対象」にとって各々の生活の中で自分らしさが保持できる安寧の確保に貢献することの重要性と研究の自由を踏まえつつ,人としての尊厳,人権の尊重,個人情報の保護,その他の倫理的観点並びに認識論的観点に立って「研究の対象」からの理解と協力を得ながら適正に推進するべきである.したがって,ここに,個人及び社会の福祉の増進に貢献することを企図してソーシャルワーク研究を進める際に遵守すべき事項を定める.

研究方法
の視座

1.ソーシャルワーク研究の科学的合理性及び倫理的妥当性の確保に努めること.
* ソーシャルワーク研究は利用者・当事者の個人の尊厳及び人権を尊重して実施する.
* 研究をする者は,認識論的合理性及び倫理的妥当性が認められないソーシャルワーク研究を行わないように努める.
* ソーシャルワーク研究の実施にあたっては,上記の点を踏まえた研究計画を準備する.

2.個人情報の保護には十分な配慮を加えること.
* 研究をする者は,「研究の対象」にかかわる情報を適切に取り扱い,個人情報を保護する.
* 研究をする者は,「研究の対象」について知り得た個人情報を正当な理由なくして漏らしてはならない.

3.インフォームド・コンセントに努めること.
* 研究をする者は,事前に「研究の対象」へのインフォームド・コンセントに努める.
* 研究をする者は,作成する研究計画にインフォームド・コンセントの手続きに関する事項を記載する.

4.研究成果の取りまとめに配慮すること.
* 研究をする者は,「研究の対象」に関する個人情報の保護に必要な措置を講じた上でソーシャルワーク研究の成果を取りまとめる.

本誌執筆者
の義務
 本誌執筆者は,「研究の対象」さらには社会の理解と協力のもと,研究が成り立っていることを認識し,「研究の対象」の尊厳,プライバシー,利益を守る義務を負うと共に,ソーシャルワーク研究のより一層の発展と一般社会への貢献が求められる.そして,研究過程およびその成果の公表において,良識と知的誠実さ,さらには倫理性が求められることを自覚し,本指針に準拠して執筆するように努める.なお,執筆にあたり所属機関の長の許可を必要とする場合は,許可を得るように努める.

1. 研究方法は十分に考慮して選択する.
* 執筆者は,ソーシャルワーク研究方法の動向を踏まえ,当該研究に適切な研究方法を採用するように努める.
* 執筆者は,実践及び研究の動向に学びながら,自らの研究水準の向上に努める.
* 執筆者は,「研究の対象」を不合理または不当な方法で選ばないようにする.

2.「研究の対象」への配慮に留意する.
* 執筆者は,「研究の対象」へのインフォームド・コンセントに努める.
* 執筆者は,研究成果の公表にあたっては,個々の「研究の対象」を特定できないようにする.
* 執筆者は,研究成果の公表にあたって,「研究の対象」に関する個人情報保護のために必要な措置を講じる.
* 執筆者は,「研究の対象」に不利益が生じないよう細心の注意を払わなければならない.
用語の
説明・定義
(事例研究)
事例研究とは,自らの実践に基づく,単一あるいは少数の事例を使用して行う研究と,公表された既存の実践のデータを使用して行う研究を指す.事例研究は,利用者・当事者等との協働作業であることを自覚し,実践を評価し,より良い実践の方向性を導き出すとともに,さらには実践理論の構築に寄与することが期待される.
* 「研究の対象」を特定できないように匿名化して,使用する.
* 自らの実践に基づく事例を使用する場合は,「研究の対象」へのインフォームド・コンセントに努め,文書で承諾を得るように努める.
* 公表された既存の事例を使用する場合は,引用文献及び引用箇所を明記しなければならない.
* 事例の本質を損なわない範囲で加工を施している場合は,その旨を明記する.
* 「研究の対象」から実名の公表について,文書により承諾を得ている場合は,その旨を明記する.

(調査研究)
調査研究とは,量的調査によって得られたデータの統計的手法を使用した分析・考察及びインタビュー法等を用いた少数の対象者への調査によって得られたデータの質的分析・考察を指す.調査研究は,調査対象者との協働作業であることを自覚し,その成果は調査協力者ひいては社会に還元されるものでなければならない.
* 調査票の文言が,「研究の対象」の人権を侵害しないように努める.
* 調査結果を改ざんしてはならない.
* 調査研究の手続きを明示する.
* 調査票及び調査結果は開示の求めに対し,説明責任を果たすべく最低5年保存する.
* 他者の先行調査で使用された調査票の全部あるいは一部を使用する場合は,その旨を注記して明示する.
* 「研究の対象」に対して,当該研究の実施に関し必要な事項について十分な説明を行い,文書でインフォームド・コンセントを受けるように努める.
* 調査の実施にあたっては,「研究の対象」に対して調査目的,調査結果の発表方法等,調査研究計画についてわかりやすく説明するように努める.
* 調査の実施にあたっては,安心・安全な方法をとり,「研究の対象」の身体的・精神的苦痛及び苦痛を最小限にするように努める.
* 調査の実施にあたって,「研究の対象」に対し何らかの身体的・精神的苦痛,あるいは負担を伴うことが予測される場合,その予測される状況をできるだけ,わかりやすく説明するように努める.
* 調査の実施に際して,必要に応じて調査対象である集団・組織・団体・地域等の匿名性を確保する.
* 個人情報から個人を特定できる情報については,全部あるいは一部を取り除き,その代わりにその人とかかわりのない番号あるいは記号を付する.
インフォームド・
コンセント
 「研究の対象」へのインフォームド・コンセントの手続きは原則的に以下に定めるが,研究の内容に応じて変更できるものとする.

1.研究者の説明事項
* 研究への参加は任意であること.
* 研究の参加に同意しないことで不利益を受けないこと.
* インフォームド・コンセントの撤回ができること.
* 研究の意義と目的について.
* 研究の方法,計画と期間について.
* 「研究の対象」として選定された理由について.
* 予測される利益・不利益について.
* 予測される不利益に対する安全対策について.
* 研究結果の公表の方法について.
* 個人情報,プライバシーの保護について.

2.「研究の対象」の受諾
* 「研究の対象」へのインフォームド・コンセントは文書をもって行うように努めること.
* 「研究の対象」が未成年の場合や何らかの理由で有効なインフォームド・コンセントを行えないと判断される場合は,代諾者等にインフォームド・コンセントを行うように努めること.
* 代諾者は後見人,親権者,配偶者,父母,成人の兄弟姉妹,子,同居の親族等,研究対象者の意思を代弁できる者とすること.
* 代諾者へのインフォームド・コンセントは文書をもって行うように努めること.
個人情報
の保護

 個人情報とは,個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができる者(他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなる者を含む)(厚生労働省『臨床研究に関する倫理指針』より)をいい,研究者は個人情報を保護する.
* 研究者は「研究の対象」の個人情報を保護し,プライバシーを守ること.
* 個人情報の取得に当たってはその利用目的を「研究の対象」に説明し,インフォームド・コンセントを行うように努めること.
* 個人情報の保存は研究計画にその方法等を記載し,保存期間後は適切に破棄されるものとすること.
* 研究結果を公表するときは,個々の「研究の対象」を匿名化し特定できないようにすること.

その他  投稿者が所属する機関等において,いわゆる研究上の「倫理審査委員会」が設置されていて,倫理審査が終了している場合,審査結果の証明書等(コピーを可とする)を提出すること.
付則:
審査の方法・
運用

 上記の倫理指針は,本誌投稿規定と相互に関連させて運用し,本誌に掲載する全ての論文等に適用するものとする.
 本誌「倫理指針」の運用について.

1)本誌に投稿するにあたり,投稿論文の内容が「事例研究」「調査研究」に該当するものは,本倫理指針に準拠して投稿することが望ましい.

2)本誌編集委員会は,「事例研究」「調査研究」に該当する論文等の掲載の可否を以下の手続きを経て決定する.
 @本誌編集委員会編集委員のうち,上記論文等の掲載号担当委員は,当該論文等が本誌の定める「倫理指針」に準拠しているか否かの検証を行うものとする.
 A検証の結果,修正を必要と判断した場合,本誌編集委員会の議を経て該当者に通知する.なお,投稿論文の場合は,その修正を経て査読を行うこととする.

  本倫理指針は2009年5月1日より施行する.